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きっと気が合うに決まってる。だって素敵な字を書くんだもん。 - 『キラキラ共和国』/ 小川糸

by kikoko

ちょっとしたあらすじ(ネタバレを含みます)

文具店をしながら先代を継いで手紙の代筆業をしている鳩子。

前回のツバキ文具店(NHKでドラマになったやつ)で出会ったシングルファザーのミツローさんと晴れて婚約した彼女。
毎日幸せを噛みしめる彼女だが、どうしてもモヤモヤする問題があった。

ミツローさんの元妻、美雪の存在である。
彼女は不慮の交通事故で亡くなった。
そこから彼が男手一つでQPちゃん(彼と美雪さんの間に生まれた子ども)を育ててきたのだ。


鳩子はQPちゃんと一緒に暮らせるようになることにとっても喜んでいた。

しかし彼がシングルになった経緯から、子どものQPちゃんにどこか遠慮してしまう部分があった。
先代の子育てが鳩子にとってとても厳しいものだったこともあり、QPちゃんには愛情を注ぎたいと強く思っていた。


親として子どもにどう接するのか。また、子どもにとって二人目の母親となる自分は、本当の意味での母親になれるのか。

なんだかんだ厳しく育てられた先代とのやり取りを色んなシーンで思い返しては、彼女は自分を奮い立たせたり勇気づけられたりする。

ミツローとの結婚生活が始まるに当たって、彼女が悩み続けることになる美雪の存在。

彼の中で生きる美雪の存在と、鳩子はどうやって自分との折り合いをつけていくのかという部分が見どころである。
その中で徐々に明らかになる鳩子と先代とのやり取りを見てると「鳩子ちゃんがんばれ!」と読者側が応援したくなる。鳩子を応援しながらも、自分も勇気づけられた。



読んでみての感想

『代筆業』と鳩子自身の人生が徐々に重なり合っていく感覚が小説を読むにつれて感じられた。
ミツローさんの元妻、美雪と鳩子を密接に結びつけたのは紛れもなく手紙だったし、
これまで代筆業として裏の役割としてのみ出てきていた手紙が、このキラキラ共和国で初めて表に出てきた感がある。


鳩子はずっと美雪に固執してるように見えなくもなかった。

ミツローさんと鳩子自身がこれからの結婚生活をちゃんとしていくためなんとか言ってもやっぱり自分との折り合いをつけたいという気持ちがあったんだろうなと強く思う。

「死んでしまった元妻」なんて心の中で一生息づいてるに決まってる。
しかもミツローさんはあまりネガティブなことを話したがらない。

そうなるとお互いがちゃんと美雪に対しての思いを共有しておかないと、どこかで彼女が言い訳に使われてしまうことだってあるかもしれない。
「美雪が生きてたら...」とか「美雪さんだったらミツローさんのこと分かってあげられたのかもね」とか。

そんなことは美雪さんが望んでない。
いや、何より鳩子自身が望んでなかっただろう。


鳩子は、何もなかったことのように接することができないだけなんだろうと思った。
過去のことであっても、一緒に暮らす以上、結ばれた仲である以上、二人の幸せは二人で築いていかないといけないと。そう思っていたんだろうなあと。


この本には、「手紙」が色んなところで出てくるわけだが、
なんとなくコミュニケーションの裏方的な意味合いを勝手に感じていた自分がいた。

文通も、代筆として頼まれる手紙もそう。

誰かと誰かが心を通わせるための裏方。


だけど、物語の最後に鳩子とミツローさん、そしてQPちゃんが美雪に手紙を書くシーンでそれは違うのかもなと感じた。

もう届かない。そうと分かってる相手でも送れる。

顔も声も知らない人とだって繋がれる。
だって文字さえ見ればなんとなく気が合うかそうじゃないかだって分かるんだもの。


「裏方どころか、自分自身といっても良いぐらいだよ!」

って鳩子の声が聞こえそうだ。


さいごに

この本は心底温まるいいお話が詰まってますよ!
(小川糸さんのブログも地味にいい)


おわり


kikoko
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