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わたしたちに恋人ごっこはまだ早かったみたい

by kikoko

その日、いつもとは違うバスで帰ろうよと言ったのはぼくだった。


よく晴れた夏の日。

たしか入学してから1ヶ月ぐらいのことだったと思う。
待ち合わせ場所は馴染みの公民館。

土日でも全然人っ気がないから、ここを選んだ。
ぼくはとにかく噂をされるのが嫌いだった。

しばしの沈黙、呼び出したのはぼく。
彼女はぼくをまっすぐに見つめ続ける。
ぼくは彼女を直視したり目をそらしたり。
やっとその言葉を言えたのはたっぷり20分ぐらい経ってからだった。


ほら、よく言う「束縛」ってヤツ。
そんなことするやつとなんてとっとと別れちゃえば良いのに、って今なら言うんだけどさ。
そのときのぼくは、無意識の内に束縛の強い男になっていた。

よくできた彼女と童貞丸出しのぼく。
そんなの続くわけ無いじゃん。


バス停には、中学の同級生がいた。
そいつはぼくが一番嫌いなヤツだった。
イヤミったらしい話し方が鼻につくし、ぼくを目の敵にしたような態度を取ってくるし、ぼくよりも偏差値の高い高校に合格したし。

そうじゃなくても他の男と話してるのを見るのは良い気はしなかった。


ロータリーをバスが通り過ぎる。

ぼくとイヤミマンと彼女は同じバス停に並んだ。
ぼくは話の輪に加わるのが苦手だ。
関心が自分に向かないとわかってる会話にわざわざ入る勇気がない。
適当な相槌一つ打てなかった。


あのときの勇気はあの場所にそっくりそのまま置いてきてしまったみたいだ。
それとも携帯電話に吸い取られてしまったか。

どっちにしろ内弁慶にも程があるほど、メールでは饒舌で。
直接会ってみると陰キャラ感がすごい人間だった。


そんな感じだったから、あっという間にその関係性は清算されてしまった。
1ヶ月。



kikoko
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