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2018-04-17『君の膵臓をたべたい』

by kikoko

「汚い顔してるなあ」

鏡を見て開口一番に出た言葉がそれかい。

確かに最近は顔の輪郭が丸くなってきてるし、
ストレス溜めがちだからニキビもできてる。

だけどもうちょっと、ねえ、言い方ってのがあるでしょうよ。
こっちだって病人なんだし。
意識はしっかりしてるし健常者と全く変わらず生活してれば、
そりゃそんな風に言いたくなるのかもしれないけどさ。


大体、「朝8時に駅集合」って早すぎじゃないのそれ。
こっちが君に逆らえないってのを知っててやってるよね、
そもそも行き先を教えてくれなかった時点で完全に計画犯じゃん。。


・・・なぜこんな時間から新幹線に乗せられて僕は北上しているのだろうか。
しかもまだ目的地教えてもらってないし。


そんな大きな声で笑うのやめろよ、
いっつもこっちが恥ずかしいってのに。
ねえ、聞いてんの。


新幹線は北へ進む。
グングンと後方へ吸い込まれる景色。
不安になりそうになるゴオオという新幹線の走行音。
山間から、ちらと覗く眩しい太陽。

朝8時45分の景色は、どうもいつも見ているどんよりしたものとはまるで違うようだ。
通勤電車に、こんな五感を感じられる要素はない。


隣には観光雑誌を開いたまま寝落ちする桜良さんの姿。

「ホント、五感なんて当てにならないな」

ワクワクやドキドキで目の前が七色に輝いたりはしなかったけど、
たしかに感じられる。



身体が、胎動してる!って!



「君の膵臓をたべたい」を読みました。

映画は観てないんですが、これはDVDを借りるべきやつやなって思いました。

「ラストが泣ける」みたいなコピーを売りにしてる小説なのかなってパッと見で思ってて、実際に話しを読み進める内に「あ、これ展開わかったわ」って感じで勝手にラストを想像してたんですが、見事に全然違うものでした。

全体的に「生きていること」が当たり前なことってすごいことだな的な感じで話が進んでいきます。
登場人物の桜良さんは高校生。余命が残り1年ほどの病人で、「死ぬまでにやりたいことの一つ」と言って主役の男の子と旅行に行くほどのアクティブな女の子です。

「当たり前に人生を送れる」ことがどれだけ貴重なのかということがこれでもかと分かる小説だと思います。

彼女を蝕む病魔、迫る余命に引き裂かれそうになる二人。
それでも前を向いて、「退院したらどこに行こうか」と旅行の算段をつけたりして青春を謳歌する二人。


しかし、ぼくたちはこういった物語の結末に慣れっこになってしまっているかもしれません。
物語がテーマとして掲げている「生命の尊さ」が、軽々しくそらんじられているのが現状なのかもしれません。

ぼくたちは、いつから、余命宣告を受けた人間の生命が
余命を迎えるその日まで存在していると思いこんでいたのでしょうか。

「生命の尊さ」は、生命が誰にだって平等であるからこそのもの。
そう。余命を宣告された人間も健常者として人生を謳歌している人間も、等しく。


いやあ、中々にショッキングな小説だったなあ。


kikoko
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