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雨が匂いと共に

by kikoko

改札を抜けて、階段を昇る。
足音は聞こえない。小気味よい音楽が耳を塞ぐからだ。


昇りきって、目をスマホから上に戻す。
刹那、聴覚は嗅覚に塞がれた。

「雨..。」

土っぽい、こう表現するしか他に形容のしようがない匂い。
雨が降り始めていた。


傘はない。走ろう。

駅から徒歩3分で家だ。早歩き程度ではあるが、走ることにした。
雫が首筋や、皮膚の薄いところに当たる度にひやりとする。

自宅マンションの付近に着いて気づいた。


匂いがしない。


いや、厳密には匂っている。
ただ、特定の場所だけが香っているのだ。

家路の途中、たかだか3分程度の間に一つの法則を見つけた。

「どうやら、人の出入りがある場所は雨の匂いが強いみたいだ。」


地下鉄の出入り口。四つ角の交差点。マンションの入り口。商店街の扉付近。


人がたくさん行き交う場所、というよりは人がたくさん交わる場所だ。
匂いの土っぽさは、そういう場所に特有のものなのかもしれない。


雨が運ぶもの。


しばらく、イヤホンは無音のままだった。
雨音はが止む。プールに入っているときのような、耳が真空状態にいるような、そんな感覚。


雨も、たまには悪くないな。


kikoko
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